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訃報

岩橋崇至 78歳 山岳写真家

11月28日、病気で死去。

葬儀は近親者で行う。

喪主は長男、宏倫(ひろみち)氏

東京都出身。写真集に「黒部渓谷」「白頭山」「北アルプス大百科」など  

                          読売新聞 12月2日(金) 14版




岩橋崇至さん(いわはし・たかし=山岳写真家)

11月28日、病気のため死去、78歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で行う。

喪主は長男宏倫(ひろみち)さん。

 国内外で雄大な山岳風景や高山植物を撮影。

 写真集に「北アルプス 花 」「燕岳」「The Rockies」などがある。

                          東京新聞 12月3日07時05分 

 




大変お世話になっております。

突然のご連絡で失礼いたします。

11月28日に 父 岩橋崇至が永眠いたしました。

生前は多大なご懇親をいただき、誠にありがとうございました。

葬儀式は下記のとおり執り行います。

  通夜:令和4年12月5日(月) 17時00分〜

  葬儀:令和4年12月6日(火) 10時00分〜11時00分

  場所:湘和礼殯館 相模大野

    〒252-0303神奈川県相模原市南区相模大野7丁目13-13 (042)-701-5081

  喪主:岩橋 宏倫 (長男)

 昨今の状況を鑑みて通夜は近親者だけで行い、葬儀は一般葬として執り行わせていただきます。

                         宏倫先生からmail 12月1日18時10分 







 山岳写真家の岩橋崇至氏の葬儀が12月6日(火)に執り行われました。相模原には朝から静かな雨が降りました。慶応義塾大学岳酔会、キヤノン、山と渓谷社、山小屋関係、プロの写真家たちが弔問に駆け付けていました。

 自然塾からは、大谷名誉会長をはじめ、石神、大越、奥井、加藤、下島、宮嶋、森田、町田、二宮、高橋、横坂の12名が参列し、通夜は小木曽、下島、西田、山口、町田、二宮、高橋、横坂の8名が参列しました。受付は自然塾有志がお手伝いしました。


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 岩橋先生とは11月23日(祝)に電話で話したのが最期になりました。「上高地」は狙いどおりの晩秋の空気感が撮れ、田代池に霧氷が来たことを報告して、2023年の活動計画を練ることにしました。

 総会はコロナ禍がまだ続きそうなので文書方式にして、2月上旬に「槍に突き刺さる夕陽」のリベンジを、上高地を6月のツツジから5月中旬のコナシ・ニリンソウに変えて、7月のホタルはそろそろまとめたいし、涸沢は例のプランを実行に移しましょう・・・などとこの日は日程を大まかに決めるところまででしたが、私の提案に頷く先生の声にいつもの張りがないことに気付きます。「疲れたから、今日の電話はこれでおしまい!」これが最期の言葉になりました。


 私は先生が亡くなる3日前から毎日不思議な夢を見続けました。自然塾の会員が次々に夢に現れて、若々しくて賑やかで楽しくて、夏の長期間の撮影行に出かけた時を思い出させるような夢でした。翌日の夢にはまた違った会員が出てきて、色々と賑やかに振舞います。いつもと違う色のリュックを担いでいて、白い箱のようなものを括り付けているのです。毎日よく続くなぁ~と思っている時に宏倫先生から連絡がありました。

 個人的には以前にもこうしたことが何度かあって、これは亡くなる人からの知らせ・Messageと理解していますから、今回の不思議な夢の連続も先生からのMessageなのかもしれないと理解したのは、宏倫先生から知らせを受けた後は夢を見なくなったからです。


 自然塾に入会して20年程経った頃に前任者から代表を引き継いで、そこからのこの6年間は、岩橋先生と撮影計画を練ったり、意見交換をする機会がたくさん持てて、私の写真に対する好奇心はますます深まり、十分に満たされましたし、充実した毎日を過ごさせていただき、まさに財産になったと感じています。先生から提案のあった、Digital技術の利点を生かして作品にしていく過程はアイディアに溢れていて、大型のフィルムカメラを駆使していた方の発言とは思えない斬新さに凄く魅力を感じていました。接しているうちに、先生の育ちの良さ、人柄の良さに気付きますが、決して他人の悪口を言わないところがみごとでしたので、自分もそうありたいと願うようになりました。その人柄の穏やかさとは対象的に、先生が撮る写真にはいつも息を呑むような凄みがあり、どこにそのパワーが潜んでいるのだろうと思っていましたが、実際に何度も撮影に同行しているうちに、念入りな下準備、情報収集力、深い洞察力が伴っていることを知ることとなりました。岩橋崇至という写真家が何を見てどう捉えようとするのか、その過程は実に学び甲斐のある宝物のような世界でした。


 ご指導を受けるようになってから、カメラのファインダーを覗く時には必ず先生の声が聞こえて来るようになりました。何を表現したいのか、どうしたら良くなるのかを意識するようになって、以前よりも確かに写真の腕前があがったような気にもなりましたが、撮った写真を見比べてみると何かが決定的に違うことに気が付きます。その違いは何だろう、何処にあるのだろうと思いを巡らせてみましたが、先生はきっと「神」を見たことがあるんだろうなぁ・・・と言う思いに至り、神聖なものが常に見えていらしたのだろうことに気付きました。


 撮影地に到着してもカメラを出さずに暫く座ったまま眺めていらしたことがあって、どうされました?と尋ねて、先生の見ていたものの説明を受けてみると、自分たちが見ているものと全く違っていたことは度々ありました。常に表現しようとするものに真摯に向き合っていて、まさに本物だと感じましたし、我らはどこかで見たような写真、誰かが撮った写真を真似て撮ろうとしていることに気が付かされました。先生と一緒に出掛ければいつも新たな発見があるので、先生が撮っている傍にいるようにして、一挙手一投足、呟きまでも聞き洩らさぬように心がけました。


 『谷川岳』『北アルプス大縦走』『北ぐにの山々』『黒部渓谷』

 『The Rockies~アラスカからメキシコまで』(6か国で刊行) 『白頭山』『槍 穂高』『名水』

 『北アルプス大百科』『燕岳-四季へのいざない』『ロックガーデン』『北アルプス 花』

 数々の写真集に表現されている世界は、まさに 神の領域 だと思って間違いありません。また、写真展会場で見る迫力満点の大型写真に心が揺すぶられたのは、神々の存在が確かにあると共感できるからに他なりません。その、人智を超えた領域を撮影した人が岩橋崇至でした。


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 先生の早すぎる旅立ちに、自然塾は深く悲しみ戸惑っています。もう少しご一緒させてもらえたら、もっと教えていただけたら良かったのに・・・と思いますが、それこそが「貪瞋痴」、欲が深すぎますとお叱りを受けてしまいそうです。 

 先生は「今まで伝えてきたことを良く思いだして、撮りたいものを自分で見つけることが大切だよ。」と仰るような気がします。先生があちらで「少し早すぎたかなぁ・・・」と悩まれることないように、中陰が明けたら動き始めたいと思います。  感謝 合掌 




横坂敏行

岩橋崇至写真自然塾 代表



  


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